《校長日誌》雑草という草はない
春の大型連休、いわゆるゴールデンウィークが終わりました。春は芽吹きの季節です。4月上旬、ある先生に「一気に春ですね。鳩ヶ谷高校の農場の畑も雑草が一斉に芽吹きました。春の芽吹きはすごいですね。」と話しました。後日、別の先生から「雑草という草はない」という昭和天皇(1901~1989)の箴言をうかがいました。
調べてみたら昭和天皇の侍従長をされた入江相政さん(1905~1985)が、『宮中侍従物語』の中で触れられています。終戦直後の初秋、天皇皇后両陛下が御用邸からご帰京されるので、宮殿の庭に草が茂っていたら見苦しいだろうと、侍従たちが草刈りをしたそうです。しかし、人手が足りずに刈りきれなかったそうです。昭和天皇がお帰りになった時に「どうして草を刈ったのかね」と尋ねられ、入江侍従は「雑草が生い茂っておりましたので、一部お刈りしました。」とお詫びしたそうです。すると昭和天皇は「雑草という草はない。どんな植物でもみな名前があって、それぞれ自分の好きな場所で生を営んでいる。人間の一方的な考え方で、これを雑草と決め付けてしまうのはいけない。注意するように。」と諭されたそうです。どんな植物にも名前や役割があり、人間の都合で邪険に扱うような呼び方をすべきではないと伝えたかったようで、入江侍従は強烈な印象を受けたそうです。
人間は思いを伝えるために、言葉を使います。農業の世界では、春に植物が一斉に芽吹くことを「スプリング・フラッシュ」と言うそうです。私は、今回、春の芽吹きの素晴らしさを伝えようと思って、「雑草」という単語を使ってしまい真意を伝えられませんでした。思いを正確に伝えることはなかなか難しいことです。大型連休中には、4月29日の「昭和の日」、5月4日の「みどりの日」がありました。言葉の大切さを昭和天皇の箴言から学びました。