校長日誌

2014年12月の記事一覧

Self-Help→西国立志編→自助論

 今日は、鳩ヶ谷高等学校の第2学期終業式でした。終業式では、校長式辞、生徒指導部長講話、生徒会本部役員紹介、校歌斉唱が行われました。その後、成績優良者表彰、写真部(第31回埼玉県高等学校写真連盟写真展、第42回川口市美術展)、園芸デザイン科(第9階NFD全国高校生フラワーデザインコンテスト)、書道部(30回全日本高等学校書道公募展)、吹奏楽部(38回埼玉県アンサンブルコンテスト高等学校地区大会 打楽器七重奏 銀賞)が表彰されました。

 今日は、終業式で全校生徒に話した内容を紹介します。

 いよいよ、今年もあと6日となりました。今年はどのような年でしたか。

 皆さんは、運命を信じますか。5日前の12月20日午前9時半ごろ、東京都葛飾区で21歳の女子大生が、交差点の横断歩道でパトカーから逃走中の酒気帯び運転の男が運転する自動車にひかれて亡くなりました。女子大生の歩行者信号は青。何の落ち度もありません。この後、交通マナーについて、生徒指導主任からお話があります。人の運命は時として残酷です。

 イソップ物語の「アリとキリギリス」の話を知っていますか。夏の間、アリは冬の食べ物を蓄えるためにコツコツ働くが、キリギリスはバイオリンを弾き、歌を歌って楽しく過ごす。そして、冬になって、キリギリスは食べ物を探すが見つからず、アリからは「夏に歌っていたのだから、冬は踊ればよい」と閉め出され、キリギリスは飢え死にしてしまいました。皆さんは、どちらを目指しますか。

 この話からは、教訓が二つあるそうです。①将来に備えて、常に準備しておくことが大切 ②アリのようにセコセコと貯め込んでいる者は、冷酷なケチが多い ということだそうです。

 グローバル化の現代は、アリのようにコツコツとやっていれば何とかなる時代ではありません。フリーターをしながら夢を追いかけたキリギリスは、夢が叶わず、アリよりも悲惨な生活に追い込まれてしまうでしょう。

 今から150年前の明治維新の頃、英国の作家サミュエル・スマイルズ(18121904)の『Self-Help』が翻訳され、ベストセラーになりました。今よりも、とても貧しかった時代です。累計で100万部は売れたといわれています。最初は『西国立志編』(高校日本史の教科書ではこの題名です)、その後に改題して『自助論』となります。序文では「天は自ら助くる者を助く」と訳された文章が有名です。まずは、「運命」は変えられないかもしれませんが、「運」を切り拓くことができると思います。そのためには、①目の前の小さなことを一つずつ確実にやり遂げること ②やり続けて、妥協しない自分になること が大切です。

 よく、「自立しなさい」と言われます。私も、中学時代に、先生や親から「自立するとは、人に頼らず、何でも自分で取り組むこと」と言われたことがあります。でも、自分一人だけではなかなか頑張りきれません。何でも自分一人だけでやることではないと思います。支えたり支えられたりしながら生きていくこと大切だと思います。私は「自己責任」という言葉は嫌いです。私が中学生や高校生だった時代(今から3040年位前)、そのような言葉は聞いたことがありません。いつから生まれた言葉なのでしょうか。きっと、バブル経済崩壊後の、失われた20年の時期に生まれた言葉だと思います。これからの時代、困ったときには「困っている」と言って助けてもらい、「困っている」と聞いたら助けてあげることとなどを再認識することが大切だと思います。そんな人々が増えてくると、きっと豊かな気持ちで生きていけると思います。