2015年5月の記事一覧

《校長日誌》自己肯定感の育て方

爽やかな五月晴れですが、鳩ヶ谷高校では今日から3日間、第1学期中間考査です。今朝は、学校に7時30分前に来て教室で自習している生徒もいます。生徒一人一人が自分の努力を信じて、爽快なスタートダッシュをきってもらいたいと思います。

健全な自己肯定感を持たせるためにはどうしたらよいのでしょうか。その人が自分では気付かない部分を評価し、そこに目を向けさせることが大切です。プロセスをきちんと見て認めてあげることが大切だと思います。そういう経験が自己肯定感を培うと思います。

学校であれば、その子供が行ったことを適切に見て、そこにいたるプロセスを含めて評価してあげることが大切です。「テストの点数には結びつかなかったけれども、テスト前の1週間毎日勉強して頑張ったね」「レポートをまとめるために図書館で一生懸命資料を探していたね」など、結果だけでなく、プロセスを含めた評価が大切です。ご家庭でも試験勉強に頑張っていたら、ほめてあげてください。

また、子供自身が気付いていなくて、評価の対象にしていないことを肯定してあげることも大切です。「君の元気な挨拶で、あの子は元気づけられていたよ」など、気付いていないところで人の役に立っていたり、自分が失敗したと思っていることが、他の人から見ると別の視点で肯定してくれているということは、とても大きな自信になります。

学校でもご家庭でも、お子さんの「自己肯定感」が育まれるような環境づくりが大切だと思います。でも最近は、社会全体的に余裕がなくなり、大人自身が「自己肯定感」を持つのが難しい時代になってきている気がします。大人も自分へのプチご褒美が大切です。

《校長日誌》自己肯定感・日米中韓の高校生の違い

日本は、以前から自己肯定感が低い社会だと言われていました。財団法人日本青少年研究所による日米中韓4カ国高校生の意識調査比較「高校生の生活と意識に関する調査」は、とても参考になる資料です。日本青少年研究所は平成25年に解散しましたが、日米中韓4カ国高校生意識調査事業は国立青少年教育振興機構に継承されています。

2012年の調査における「自分の性格調査」では、「自分を価値のある人間だと思う」と回答した高校生は、日本(39.6%)、米国(79.6%)、中国(86.8%)、韓国(86.8%)でした。「自分はダメな人間だ」と回答した高校生は、日本(83.7%)、米国(52.8%)、中国(39.2%)、韓国(31.9%)でした。日本の高校生は「自分を価値のある人間だと思う」自己肯定感が、米中韓の高校生に比べると半分以下でした。また、「自分はダメな人間だと思うことがあるか」という調査については、「よくはてはまる」と回答した日本の高校生は、1980年が12.9%2002年が30.4%2012年が36.0%32年間で3倍に増加しています。

日本人が自己評価が低いというのは、謙譲の美徳という日本の文化もあるので、アンケートはその影響を受けているとも考えられますが、自己がまだ十分に成熟していないということもあるかもしてません。人は誰でも長所や短所、得意、不得意があります。現実の条件に左右されて望むように進めないこともあります。それらを全て含めたものが等身大の自己であり、「ありのままの自分」だと思います。そういう自分をまず認識することが「自己を肯定すること」なのだと思います。

自己への評価が低いと、人は他者への攻撃や排除に向かいがちです。ダメな人がいて、その人との比較において自己を肯定しようとしていけば、当然自分と違う人を「あいつはダメだ」と否定するようになります。しかし、そのような他者への否定の上に成り立つ自己肯定は長続きしません。

《校長日誌》自己肯定感って何?

「自己肯定感」とは心理学用語でself-esteemを訳した言葉です。心理学や教育学で使われていますが、一般的にはわかりにくい言葉だと思います。「自己肯定感」は、自分に対する評価を行う際に、自分のよさを肯定的に認める感情のことです。自分を「かけがえのない存在、価値ある存在」と認める感情が育まれる際に働くプラス面の感情を自己肯定感と捉えています。「自分が生きていることには意味がある」など、自分の命を大切にし、自身を肯定的に捉える感覚なのです。自己肯定感については、他者をさげすんだり、自分より下位の者の存在に置こうとしたりするなど、他者を軽視することによって、自己を肯定的に評価しようとすることは望ましい姿ではありません。

 私は、教育において「自己肯定感」を育てることはとても重要なことだと思っています。精神科医の香山リカさんは、「大人になってからでも自己肯定感を持てないということではありませんが、非常に困難です。自己肯定感は人生の早いうちに形成される必要があると感じます」と言っています。

《校長日誌》学ぶなかで身につけてもらいたいこと

「教育」といっても、「学校教育」「家庭教育」「社会教育」「企業内教育」などいろいろな教育内容があります。よく「教育については学校と家庭は車の両輪」と言われます。子供たちに知識や体験を学ばせることは、学校だけでなく、家庭でもできると思います。精神科医の香山リカさんは、子供たちが学ぶなかで、①自己肯定感 ②真理・真実の価値への信頼 ③想像力 の3つを身につけてもらいたいと言っています。

このことは、学校ではなく、各家庭でも身につけられると思いますが、私は特に公立学校で学ぶことについて意義があると思います。一つは、同じ年代の集団の中で学ぶことに意義があると思います。同年代のなかでは、共通点も差異も認識されやすくなります。その中で「自己」を認識し、他者との関係を学び、多様な思考や感性があることがわかってきます。

また、学校では、家庭の経済力や家族構成に関係なく、どの子供にも身につけさせることができます。私立学校はその設立趣旨や進路実績などにより、保護者の経済状況や社会状況が同じ傾向の子供たちが集まりやすいといわれます。公立学校ではどの子供も同じように地域と共に歩んでいける人間関係が培うことができると思います。

子供たちに身につけてもらいたい、①自己肯定感 ②真理・真実の価値への信頼 ③想像力 について数回にわたり考えてみたいと思います。

《校長日誌》スクールカウンセラー

鳩ヶ谷高校では、今年度からPTA後援会の御協力をいただいて、スクールカウンセラーに月1回来てもらっています。スクールカウンセラーという言葉を最近は耳慣れてきた感じがしますが、その歴史は比較的浅いのです。公立学校では、平成7(1995)年に文部省(当時)が「スクールカウンセラー活用調査委託事業」を開始し全国の学校154校に導入したのが最初です。当初は「活用調査」という試行で始まったものですが、教員免許を持たない教育とは異なる専門家の登場に、学校は戸惑ったようです。思い出してみると、私も当時勤務していた高校から生徒指導研修会に行き、「カウンセリング初級」を受講した記憶があります。

日本の学校では、明治以来、担任教師がすべての役割を担うという形で学校教育が進められてきました。日常的な生活指導から、進路指導、悩み相談まで一人の担任がクラスの生徒全員を対象に行ってきたわけです。中学校や高校ではさらに部活動の指導が加わります。アメリカでは、それぞれの専門家が分担していますが、日本の教師は「何でもできる」スーパーマン・スーパーウーマンが期待されていました。最近では日本でも、社会や家庭の状況が変化する中で、教師だけでなく、外部の方の協力をいただきながら教育活動に取り組むようにはなってきていますが、アメリカに比べると教師一人一人の役割は大きいです。一人の教師が複数の役割を兼ねることのメリットもあります。一人で担当しているために、家庭環境から身体の調子、友人関係や学業成績までトータル的に理解できるのはその一つでしょう。

スクールカウンセラーの仕事は、子供の面接、保護者の面接、教師へのコンサルテーション、外部機関との連携、研修会など多岐にわたります。子供がSOSを発信した時、どのように対応してよいのか親も教師もわからなくなってしまう時があります。そのような時に、専門職としてのスクールカウンセラーの役割は大きいと思います。

伊藤美奈子 奈良女子大学教授は次のように言っています。「今、子供たちには『生きた壁』が必要です。壁は外部と内部を遮断するものであり、子供が自由にするのをある程度規制する、邪魔をする役割があります。『ダメなものはダメ』と言い切れる強い壁の存在は重要です。この壁は、子供が不用意に外に出てしまって、自分で傷ついたり苦労したりするのを防ぐ『守り(防壁)』になっているのです。家庭は『ルールを教え規制する厳しさ』と『守りの力』の両方を持っていないといけないのです。さらに、子供を取り巻く壁は、単にセメントのように無機質の壁ではなく『生きた壁』でなければなりません。生きているが故に、ぶつかった子供も痛いけれど、ぶつかられた親の側も痛みを感じ、子供の要求にしっかりとぶつかった上で、『ダメなものはダメ』と言う。ただ単にピシャッとはねつけるだけではなく、子供の痛みを感じつつ親としての痛みにも耐えるという血の通った存在であってほしい。」

このような「生きた壁」になるために、保護者や教師の連携は重要です。そこにスクールカウンセラーの方も加え、三者でスクラムを組みながら、子供たちの成長を支援できればと思っています。

《校長日誌》変えられるのは自分と未来

春の大型連休(ゴールデンウィーク)が終わりました。始まる前はワクワクして、あれをやろうこれをやろうと思っていましたが、過ぎてしまうとあっという間です。私も、学校に行ったり、連休明けの仕事の準備をしたりしましたが、1日だけスマホのアプリを使って、皇居(江戸城)の散策をしました。内堀1周5キロを歩きながら、改めて江戸城の大きさを実感しました。

ゴールデンウィークが終わると、新入生や新人社員などが新しい環境に適応できないことが原因でメンタル的に不安定になる「五月病」の季節でもあります。

人間は常に後悔する生き物だと思います。「なぜあの時、あんなことを言ってしまったのか」と過去のことや他人の言動を気にするものです。カナダ出身の精神科医エリック・バーン(19101970)の名言があります。

「他人と過去は変えられない。変えられるのは自分と未来」

という言葉です。

他人の人生や過去に起こったことは変えることはできません。変えられない過去に執着するより、変更可能な「自分」と「未来」に注目してみましょう。

「未来」を変えるためには、「行動」を変えていくことが大切です。自分の「行動」を変えれば、未来は変わります。一度やってうまくいったなら、次もその方法でやってみることです。うまくいったことを何度も続けているうちに、自分の得意分野ができてきます。そうした経験の繰り返しが自分の身を助け、自信をもたらしてくれるでしょう。逆に、うまくいかないなら他のことを試してみることです。うまくいかないことに、いつまでも執着することはありません。自分に合うものなら、時間も忘れて没頭できますし、合わないものの何倍もの速さで、取り組むことができます。

 今年は、秋にも大型連休(9月19日~23)がありますが、別名シルバーウィークというのだそうです。「他人」と「過去」は変えられません。変えられるのは「自分」と「未来」です。この二つを変えることに取り組めば、「うまくいかない自分の人生」が何倍も生きやすく、楽しいものに感じられるでしょう。