2016年1月の記事一覧

《校長日誌》『下町ロケット』『下町ロケット2 ガウディ計画』

 平成27年秋の連続テレビドラマ視聴率でTBSドラマ『下町ロケット』(阿部寛主演)が18.5%でトップでした。年間ドラマ視聴率でもトップという人気ドラマでした。原作は、池井戸潤の第145回直木賞受賞作品である『下町ロケット』(小学館2010年)と続編の『下町ロケット2 ガウディ計画』(小学館2015年)です。

 池井戸作品では、半沢直樹シリーズ(『オレたちバブル入行組』(文藝春秋2004年)、『オレたち花のバブル組』(文藝春秋2008年)、『ロスジェネの逆襲』(ダイヤモンド社2012年)、『銀翼のイカロス』(ダイヤモンド社2014年))を始め、『空飛ぶタイヤ』(講談社文庫2009年)や『不祥事』(講談社文庫2011年)に始まる「花咲舞が黙ってない!」シリーズなど池井戸作品はどれも面白い。池井戸作品は、「一生懸命生きていれば、必ずいいことがある」と信じさせてくれます。しかし、「下町ロケット」シリーズは別格だと思います。

 心が疲れている時、涙が出そうな時には勧善懲悪のものがいい。なぜなら、疲れている時には、それと逆のことを考えがちだからです。自分はダメな人間だ、周りの人が信じられないなど、孤独感が強まり、どんどん自信がなくなっていきます。涙が出てくることもあるでしょう。しかし、池井戸作品を読むと、人生これから先、悪いことばかりではないと思えるようになってきます。

 「下町ロケット」シリーズの主人公は、佃製作所社長の佃航平という中小企業の社長です。しばしば崖っぷちに立たされ、絶望的な状況に追い込まれます。しかし、意外なところから主人公の味方が現れたり、悪役が窮地に追い込まれる事実が発覚したり、大逆転が起こります。

 生きるのは決して楽ではない。壁にぶち当たり、投げ出したくなることも何回もあるかもしれない。しかし、夢を持ち、誠実に正直に生きていれば、必ず素晴らしい人生が待っていることを教えてくれます。そう教えてくれるのが『下町ロケット』という作品であり、池井戸潤という作家だと思います。

 『下町ロケット2 ガウディ計画』で私の好きな文章を紹介します。主人公である中小企業の佃製作所社長の佃航平が、会社に不満を持って辞めていく若手社員に、テレビドラマでは涙ながらに贈った言葉です。

「・・・どこに行っても楽なことばかりじゃない。苦しい時が必ずある。そんな時には、すねるな。そして逃げるな。さらに人のせいにするな。それから・・・夢を持て。オレがお前に贈ってやれる言葉はこんなことぐらいしかない。」

《校長日誌》似て非なるモノ

 新年明けましておめでとうございます。鳩ヶ谷高校は本日から第3学期がスタートしました。始業式がありましたので、校長講話の内容を御紹介します。
 今日は「似て非なるモノ」についてお話します。似ている言葉というのは案外くせモノです。一般的には、「似ている」=「ほとんど同じ」というとらえ方をすることが多いように思いますが、「似ている」=「同じではない」という視点も大切です。

 例えば、「おざなり」と「なおざり」という言葉は、とてもよく似ていますが、意味は大きく違います。「おざなり(御座成り)」は、自分で意識していいかげんな言動をしてその場を逃れようとする行為です。「なおざり(等閑)」は、自分で意識しないでおろそかな結果になってしまったことです。

 「整形外科」と「形成外科」も響きが似ているので、誤解されやすいようです。「整形外科」は身体の運動に関する治療などを行う医療機関です。「形成外科」は身体の表面など美容整形や若返り治療などを行う医療機関です。

 10月の全校集会で「ガラパゴス化」について話をしました。その時、わずか15年前、当時の日本の携帯電話は、サービス内容や機能は世界トップ水準でしたが、日本国内仕様にあわせて作り込んだため、世界での競争力を落としてしまい、今や製造すらほとんどしなくなってしまったことを紹介しました。このことは「ガラパゴス化現象」と名付けられました。携帯電話は略して「ガラケー」です。

 鳩ヶ谷高校のガラパゴスについてもお話しました。今日は皆さん、遅刻していませんか。「始業チャイムの鳴り終わりの時に教室にいない場合を遅刻とする」という鳩ヶ谷高校のルール。このルールができたのは、平成12年2月26日。私は鳩ヶ谷高校のガラパゴスの象徴だと思います。世の中では、チャイムの鳴り始まりが始まりです。チャイムの鳴り始めでも鳴り終わりでも似ているからいいじゃなかという人もいるかもしれません。ある人が言いました。「電車のベルは鳴り終わりです。」世の中では、このような発想を屁理屈といいます。

 3年生が家庭研修に入った2月1日から、鳩ヶ谷高校ではすべてチャイムの鳴り始めに始めます。1・2年生は切り替えること。先生方も切り替えます。鳩ヶ谷高校を世界標準に戻します。

 「悪法も法なり」という格言があります。古代ギリシアの哲学者ソクラテス(B.C.469頃~B.C.399)が言ったという人がいますが、作り話でしょう。「法が自分に都合の悪い答えを出したとしても、それを受け入れなければならない」と解釈する人がいますが、リーガルマインドでは違います。法的思考では、間違った法は正していかなければならないことをいっているのです。

 「できない理由を探さない。できる知恵を見出す」ように心がけましょう