校長日誌

2016年11月の記事一覧

《校長日誌》これは納得!主権者教育

 昨日は、川口市選挙管理委員会の4名の皆様の御協力をいただき、3学年の「総合的な学習の時間」で主権者教育を行いました。選挙権については6月の全校集会の校長講話でも具体的に話をしました。

 従前の公職選挙法において満20歳以上の者が選挙権を有するとされていましたが、平成27年6月、選挙権年齢を「20歳以上」から「18歳以上」へ引き下げる改正公職選挙法が国会で可決成立し、選挙権を有する年齢が引き下げられたのです。それまでの「選挙権年齢は20歳以上」というのは、昭和20年に定められたものなので、今回は70年ぶりの大改正となります。現在、191の国や地域のうち、18歳までに選挙権を付与している国はおよそ90%にものぼるので、世界の趨勢に則した改正といえます。この改正により、およそ240万人の18歳、19歳の人が有権者となりましたが、それは全有権者のおよそ2%にあたります。7月の参議院議員選挙では、鳩ヶ谷高校の生徒でも選挙権を得て投票した生徒もいたと思いますが、まだ18歳になっていなかった者は、投票したことがありません。そこで、今回の主権者教育を企画しました。

 川口市選挙管理委員会の方が、まず、川口市の状況についてパワーポイントを活用して解説していただきました。そして、選挙で実際に使用する投票箱、記載ブース、投票券発券装置などを使用し、「新川口市長選挙公報」と整理券が配付されました、いよいよ、群馬一郎候補、とちぎ花子候補、埼玉太郎候補の3者による選挙戦に突入しました。本校の教員が候補者になり、生徒一人一人に熱く自分の政策を語り、投票を呼びかけました。実際さながらの選挙戦では、3年生の投票の結果、とちぎ花子候補が見事当選しました。とても記憶に残る主権者教育でした。

 「聞いたことは、忘れる。見たことは、覚える。やったことは、わかる。」と言葉がありますが、3年生一人一人が選挙の大切さを「わかった」と思います。川口市選挙管理委員会の皆様に改めて感謝いたします。

《校長日誌》故郷2016 ♪私の心の中の地図♪


 今日、女子バスケットボール部の新人大会公式戦があったので、応援に行きました。鳩ヶ谷高校は残念ながら試合は敗れてしまいましたが、あきらめずに懸命にボールを追い求める生徒の姿を見て、大和ハウス工業のCM「故郷2016」と重なってしまいました。

 CMは、都会から離れた土地で生まれ育った高校生たちの日常を描いています。「神様はなぜ僕らをここに閉じこめたのか…」という高校球児のナレーションから始まります。メインとなるのは弱小野球部に所属する高校球児、何にも興味が持てず、ただ時間をやり過ごす女子高生、そして、ラッパーに憧れ、下手くそなラップを田舎町に響かせるラッパー男子。女子高生は「目に映る全てが嫌いで…」とつぶやきます。ラッパー男子は「この町の奴らは苦労がねえな。一言言わせろ クソッタレ!」と叫びます。そして、高校球児は「…それ以上に、自分が嫌いで…」とつぶやきます。練習帰りに、野球部の仲間が「どうせ予選落ちだよ。つまんねえ」と言うと、大声で叫びながら走り出す高校球児。夜に大声で叫びながら自転車で全力で走る女子高生。鉄橋の下で大声で叫ぶラッパー男子。その叫び声は、いつしか笑い声に変わっていきます。笑うことしかできない高校生の世代の若者がエネルギーを持て余す表情を追う内容ですが、最後に「逃げ出したかった場所こそが、僕の「楽園」であった。」というテロップ。自ら人生の「楽園」であると知るのはずっと後のことです。誰にでもある青春の日々と望郷をユーミンの新曲「私の心の中の地図」の歌にのせて描いています。

 今日のバスケットの試合で、仲間を信じてひたむきにプレーしている高校生の姿はすがすがしかったです。北海道や三重県、長崎県などの高校長と話をする機会があり、「高校生と地元の活性化」がマイブームになっていたのでCMと一層重なってしまいました。高校生の頃、故郷が退屈で窮屈でつまらなく映るときが確かにあります。高校教育では、「グローバル人材の育成」が叫ばれていますが、私は「地域を活性化させる人材の育成」も重要なことだと思います。先日、北海道に在住している学生時代の友人と25年ぶりに会いました。時間が過ぎても消えることのない思い出は、価値ある時だったことに改めて気づかされました。

 大和ハウス工業の総合宣伝部は、「青春の日々には『家』があり、家族との暮らしがあり、『家』が温かい場所であるからこそ、そこから飛び出したい気持ちも芽生えます。そして、同じ気持ちをもつ友がいて、誰にも青春があり、誰にも『家』があるという情景を、『私の心の中の地図』の楽曲に乗せて制作しました」とコメントしています。

《校長日誌》中等教育の再生~『異論のススメ』から思ったこと~

 佐伯 啓思 京都大学名誉教授は、『異論のススメ』(平成2811月3日『朝日新聞』朝刊)で中等教育の再生は「脱ゆとり」で解決するのかについて論じていました。「今日の中等教育はあまりにも問題を含みすぎており、どこから手を付ければよいのか、途方に暮れるといった状態にある。…一般化はできないが、とりわけ公立中学校の教師の負担は、教職という職種からすると想像を絶するような忙しさである。週に25時間の授業をしつつ、それぞれの業務のほかに、部活、会議、素行不良生徒等への対応等が続き、帰宅は深夜近くになる、などという話はよく耳にする。…日本では、土曜、日曜も部活のために出なければならない。部活にとられる時間とエネルギーは相当なもので、部外者からすれば、いったいどうして部活のウェートがかくも大きいのか不思議なのだが、おかげで教師も生徒もほとんど休日がなくなっている。OECDの調査によると、加盟国の週平均勤務時間が約38時間で、日本は54時間にもなっている。多い教師はこれをはるかに超えるだろう。」と述べています。

また、「本当に深刻なのは、学力的にいえば「中」から「下」にかけた生徒の中等教育だと思う。おそらく日本に置いては学力レベルでトップクラスの子供たちは世界水準でもトップレベルであろう。彼らは多くの機会にめぐまれその多くは充実した学校生活を送っているかもしれない。しかし、平均から下にかけては、学校自体が面白くなくなってしまう。しかも、いじめや校内暴力、不登校の場合、子供からすれば、家庭がうまくいかず居場所がなくなっているケースが多い。これは、学校だけではなく社会問題でもあるのだ。」と指摘しています。

現在の高校生の現状と課題を分析すると大きく3つの論点あります。1点目は、学力の課題です。OECD生徒の学習到達度調査(PISA)において、2012年の調査では日本の高校生は、読解力、科学的リテラシーの2分野において読解力、科学的リテラシーにおいて1位となり、トップレベルを回復しましたが、学習への動機付けや社会との関連、自己肯定感の低さが課題になっています。よく考えてみると、2012年のPISA調査は、いわゆる「ゆとり教育」を受けた世代が調査対象であり、「ゆとり教育」が否定される根拠にはならないと思います。

2点目は、保護者の経済状況の激変です。現在の日本では、深刻な社会問題のひとつが「子どもの貧困」と呼ばれる問題です。経済的貧困が直接・間接の原因となり、子供たちの可能性が奪われています。日本の実質所得は、1990年代末にピークを迎えた後には下落を続け、現在は30年前の水準に戻っています。一方で、相対的貧困率は着実に伸び続け、現在一人あたりの等価可処分所得(家計所得を家計人数の平方根で割ったもの)が110万円以下の貧困家庭は16%となっています。特に貧困率が深刻なのは母子家庭で、2/3の母子家庭では世帯収入が300万円以下です。ここ15年で子供たちをめぐる経済環境が大きく変化しています。

3点目は、高校生の学校外における学習の時間の変化です。平成17年度に国立教育政策研究所が、全国の高校生15万人を抽出調査しました。土日を除く平日に全く勉強していない生徒は39%でした。その一方で、高校生の学校外の平均学習時間については、1990年、2001年、2015年の比較では、中上位層では、114(1990)99(2001)119(2015)と大幅な改善傾向が見られますが、下位層では、49(1990)38(2001)45(2015)と低い水準で推移しています。その一方で、高校生の携帯電話・スマートフォンの1日あたりの平均使用時間(2015年調査)は、男子高校生が3.8時間、女子高校生が5.5時間と1日の時間を大きく圧迫しています。

ここ7~8年の中学生向けの学習塾では、一斉授業的な指導方法の従来型ではなく、個別指導型や最大6人という少人数指導型の学習塾が増えてきています。これは中学生の学力幅が多様となり、一斉授業に耐えられない生徒が増えてきているという中学生の変化を踏まえ、ニーズに対応する学習塾の経営姿勢が背景にあります。

 佐伯名誉教授は、「フィンランド方式とは、一種のゆとり教育であり、平均以下の子供の底上げを狙って個々の子供に合わせた学習を採用するものであった。」と述べています。保護者の経済格差によって子供たちの将来が狭まらないように、また、教員の業務を増やさずに、私たちが日々接している多様な学力の生徒一人一人に対応できる学習指導の方策がないか研究をしています。

《校長日誌》第26回埼玉県産業教育フェア

 今日は、大宮ソニックで開催されている第26回埼玉県産業教育フェアに来ています。埼玉県産業教育フェアは、専門高校の生徒による学習成果の発表等の活動をとおして、生徒の技術力、創造性や課題解決能力、コミュニケーション能力等の向上を図るとともに、広く産業教育の魅力と役割を紹介し、県民の皆様の関心と理解を高めることを目的に毎年開催されています。
 今日は鳩ヶ谷高校情報処理科3年の生徒7名が、県教育委員会の取組の一つである実践的職業教育グルーバル事業「商品開発力交流分野」中間発表会でプレゼンテーションをします。本校の他3校で共同開発した商品の中間発表です。12月には台湾に4校(本校の他、川越総合高校・鴻巣女子高校・川越工業高校)の代表生徒が派遣され、商品販売や現地の高校生と交流します。
 明日は、園芸デザイン科の生徒が、10時から13時まで造花を使った花カンムリの体験コーナーを担当します。
 秋晴れの土日、大宮ソニックに是非お越しください。